塩嶋理事長ご挨拶

日頃よりブラインドサッカーならびにロービジョンフットサル、協会活動につきまして格別のご理解とご尽力をいただき厚く御礼を申し上げます。

2022年に、日本ブラインドサッカー協会は創立から20年目という大きな節目の年を迎えました。たった数人が熱い思いだけを胸にスタートした組織は、皆さまのおかげで、競技団体として事業団体として大きく成長することができました。あらためて、これまで携わっていただいたすべての方々のご努力と献身的なご支援に対して、心より感謝申し上げます。

20周年を迎えた後も引き続き、より多くの方々にブラインドサッカーの醍醐味、楽しさと面白さを知っていただくとともに、日本障がい者サッカー連盟を通じて7つの障がい者サッカーとも連携し、障がい者スポーツの認知度向上と啓発をしていきたいと思っております。

私とブラインドサッカーの出会いは、2005年のボランティア活動がきっかけでした。当時のボランティアは、ボールが遠くに行かないように“人フェンス”になるお手伝いでした。2006年には当時勤務していた企業がブラインドサッカーをサポートすることになり、そこからさらにブラインドサッカーに深く関わるようになりました。「一企業人である前に、一企業市民であれ」という理念、オフィスを離れても社会貢献できる人材になれ、という教えが私を大きく突き動かしました。ブラインドサッカーの魅力は、なんといっても迫力あるプレー、そして音の鳴るボールです。こんなにスタイリッシュで、わかりやすいスポーツがあるのかとその訴求力に大きく心を動かされました。視覚障がいのある選手がプレーしているのを忘れるほど観ていて面白いスポーツです。より多くの方にブラインドサッカーの試合を観戦してもらいたい、知ってもらいたいという気持ちで、協会のサポートを行い、気がついたら現在の日本ブラインドサッカー協会の理事長という場所にいました。

ブラインドサッカーのもう一つの魅力は、そのプレーだけでなく、競技を統括する中央団体である協会にもありました。まず協会の掲げたビジョン「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現する」に心より共感しました。見えない人、見える人が一緒にプレーするブラインドサッカーは、すでにピッチの上にビジョンを体現しています。

また、協会も20年の間には、競技をする環境が整っていないなど様々な問題が山積していました。そのような障壁を、ひとつひとつ手さぐりで乗り越えていく中で、階層のないフラットな組織で皆が力を合わせて一緒に働くという経験は、長年会社で働いてきた私にとって鮮烈でもありました。現在も事業型のNPO法人、課題解決型のNPO法人として力強く前に進んでいます。

私にとっても、2021年8月末からの東京パラリンピックもとりわけ思い出深いイベントの一つです。ブラインドサッカーが日本に紹介されて以来20年、出場することは先人たちの思いが詰まった草創期からの願いでもありました。自国開催の記念すべき大会は、初出場、初勝利、順位決定戦に勝って5位となりました。次の飛躍に大きくつながるものと期待しております。友人知人からも、ブラインドサッカーの試合を初めてテレビで観戦した、面白かった!という声も多く寄せられ、あらためて黎明期に思いを馳せる機会となりました。

今後も、日本ブラインドサッカー協会の事業の柱の一つダイバーシティ&インクルージョン事業であるスポ育やOFF T!ME、OFF T!ME Biz、またキッズプログラム、アクサ地域リーダープログラム with ブラサカなどの既存プログラムも、安全で安心なオンライン開催などの工夫を経て今では再開しています。競技団体として、クラブチームが47都道府県に設立され、地域に根差した活動の裾野が広がる取り組みにも力を注いでいます。

withコロナにおける新しい日常に向け、おたすけ電話相談窓口を開設しました。さらに、新しい事業にも取り組んでいます。視覚障がい者「同行援護」事業の本格稼働です。同行援護申込みサービスの運用を開始し、「同行援護従業者」養成研修も開催しています。掲げているミッション「障害の有無にかかわらず、生きがいを持って生きることに寄与すること」に向け、今後もブラインドサッカーが持っている価値を社会に提供できるように努めていきます。

人が無意識に持つ偏見を可視化するプログラム「UB-Finder」の活用も促進していきます。また、参天製薬株式会社、IBF Foundationとともに推進している長期プロジェクト「VISI-ONE」(ビジワン)を通して、ブラインドサッカーのみならず、パラスポーツが文化として定着する礎になること、私たちにとってもこれからの大きな勇気や原動力として様々な変革に取り組んでいけるのではないでしょうか。

HPD(ハイパフォーマンス・ディレクター)も2022年4月に設置し、育成からエリートまでの連携と強化を図ってまいります。男子日本代表だけでなく、女子日本代表、ロービジョンフットサル日本代表も新体制となり力強く再始動しています。強い日本代表、愛される日本代表をめざしてまいります。熱いご声援をよろしくお願いいたします。

すでに再開している「ブラインドサッカー地域リーグ2022」と新設された「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ」の2つのリーグが大きなベクトルに向かって、シナジー効果を発揮して躍動していくものと確信しています。試合と観戦機会の創出ができることをうれしく思います。

昨年の東京パラリンピックを経て、今パラスポーツの注目度は年々高まり、大きなうねりの中にあります。私たちは、これまでもこの競技が持つ無限の可能性にふたをしていないだろうか、と自問自答してきました。あらためてパラスポーツの限界を超えていかなければなりません。日本のブラインドサッカーが新たなステージへ挑戦するときが来たのです。「LIGA.i」は、選手の成長、クラブチームの組織力強化、日本代表の強化に資することにつながります。満員で埋まるスタンドの光景を描いています。会場演出やエンターテインメント性など国内大会でも会場の一体感をつくりあげていく大会運営力の強化にも期待しています。

様々な事業への取り組み、試合の開催は多くのボランティア、サポーター、パートナー企業や協賛企業、行政や自治体、地域の方々、ご来場の皆さん、すべての関係者によって支えられています。年々の大きな広がりを感じますが、あらためて日頃のサポートに深く感謝いたします。

皆さまとともに、掲げている協会のビジョン「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」、ミッション「ブラインドサッカーに携わるものが障害の有無にかかわらず、生きがいを持って生きることに寄与すること」に力を注いでまいります。 これからも心のバリアフリーや意識のイノベーションの推進、無意識の偏見への気づきなど共生社会の実現に大きく貢献できるものと確信しています。 スタッフ一同、ますます張り切っています。皆さまの声に積極的に傾聴し、新たな視点に立って、これまでの20年で築き上げてきた活動をさらに進化させていく所存です。

今後とも日本ブラインドサッカー協会をご支援の程よろしくお願いいたします。

2022年9月吉日

NPO法人日本ブラインドサッカー協会
理事長 塩嶋史郎

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